事業者の声

(平成27年度に実施した「住宅履歴情報流通共通管理システムの構築と横浜市での試行運用」における事業者の声)

事業フレーム(住宅履歴情報流通共通管理システムの構築と横浜市での試行運用)

 売主が保有する住宅履歴情報を、REINS関連の「不動産総合データベース」を介して購入検討者へ情報提供するため、住宅履歴情報のうち基本的な情報を管理する「住宅履歴情報流通共通管理システム」を、国土交通省の補助を受けて構築するとともに、国土交通省が平成27年度に横浜市で行った不動産総合データベースの試行運用と連携して、売却物件の住宅履歴情報登録サポートキャンペーンを実施した。

 履歴協では、キャンペーンの開始に先立ち、横浜市の不動産業者の団体を中心に説明会を開催して周知を図るとともに、登録手続が適切に行えるよう登録方法や手順を示したページを協議会ホームページに追加した。

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図1 住宅履歴情報登録・提供フロー


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図2 不動産総合データベース画面イメージ


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図3 履歴協ホームページに掲載したバナー

事業結果

 平成27年6月1日からキャンペーンを開始したが、不動産総合データベース側の売却物件情報には詳細な住所情報が入力されない場合が多く、住宅履歴情報流通共通管理システム側の情報との照合が困難であったことなどから、実際に登録できたものは僅かにとどまった。

事業者の声

 実際に登録サポートに申込みを行った不動産事業者E社に、詳細ヒアリングを実施した(平成28年2月)。申込み物件は僅かであるが、それぞれ、売主より申込み・不動産総合データベースへの情報提供の承諾を得ている。しかしながら、前述のとおり、レインズで、所在地の番地・号までの入力はなく、住宅履歴情報流通共通管理システムとのデータの連携は叶わなかった。表1、表2にヒアリング結果について示す。

 住宅取引時における住宅履歴情報の活用について、実際に登録サポートの申込を行った不動産事業者の意見について、以下にまとめる。

  • 住宅履歴情報の収集や登録の手間が大きく、メリットを感じられない。
  • 住宅履歴情報に関する事業者、消費者の認知が必要。購入希望者は、実際の物件を見て判断している。
  • 住宅履歴情報の開示・システム登録などが必須となった場合、元付の不動産事業者が登録作業を行うものと考えている。無償でない限り、情報サービス機関との連携は考えていない。
  • 売主は、売り易くなると説明すれば、登録サポートの申込みには協力的である。
  • 「番地・号」などの入力は、業界ルールと罰則を制度化して必須としていかないとこれまでの慣習は変わらない。
  • レインズに直接入力せずに、他のWebサービスを通じて、レインズに情報がいくケースもあるので、業界全体でのシステム対応が大きな課題であると認識している。

表1 住宅履歴情報登録サポートに申込を行った不動産事業者に対するヒアリング結果①




ヒアリング内容 ご回答
















1 不動産取引における住宅履歴情報の必要性についてお聞かせください。新築物件の場合、中古物件の場合、戸建住宅と集合住宅(マンション)との差異などもありましたらお願いします。
  • 住宅履歴情報について事業者・消費者に認知されておらず、登録状況が少ないと感じる。
  • 登録が無くても取引に問題が無い状況では必要性を感じていない。
  • 運用するメリットと手間を比較すると手間の方が大きいのが現状。
  • 中古戸建の設計図などは、ほとんど取得困難。マンションは東京カンテイが整備しており、そこから取得している。
2 不動産取引において、住宅履歴情報の開示が制度的に必須となった場合、誰がこれらの情報を収集するのが適切だと思いますか?
  • 必須となったら、元付事業者の担当が行うしかないと考える。
  • 情報サービス機関の利用については、無償なら利用する。
3 また、これらの情報を、システムに登録することが必須になった場合、誰が、登録するのが適切だと思いますか?
  • 元付事業者の担当(もしくは、担当が依頼する業務担当者)。
4 2015年度、横浜市内の物件を対象に、不動産総合データベースの試行運用、並びに「いえかるて協議会」による住宅履歴情報登録サポートキャンペーンを行いました。当キャンペーンに申込みいただけないとすれば、その理由はどのようなことでしょうか。
  • 当初、中古戸建3〜4件を申し込んだ。
  • 物上げ時に材料(登録する内容)が少ない実状と登録する手間※から、以降は、利用しませんでした。
    ※不動産事業者がある程度情報を整理していた模様
5 レインズでは、2016年1月より、住宅性能に関する情報を登録できるようになりました。購入希望者への情報提供のために、これらの情報や住宅履歴情報をどのように取得しようと考えていますでしょうか。
  • FRKの会員のため、レインズの登録内容が変更になったことを知らなかった。home-navi をハブとしてネット(レインズ含む)に掲載されるようになっている。

表2 住宅履歴情報登録サポートに申込を行った不動産事業者に対するヒアリング結果②




ヒアリング内容ご回答







1住宅履歴情報登録サポートの申込者は売主に代わって、不動産事業者としましたが、この点について、どのように思いますか? 売主が直接申し込めばよいと思いますか?
  • 売主に説明するのが慣れないと手間に感じる。
  • 売り易くなるという説明をすれば、売主側は比較的簡単に申込書に署名・押印してくれる。
2住宅履歴情報登録サポートにて登録するフェイスシートの項目について、取引上、重要と考えられる項目、重要ではないと思われる項目を教えてください。
  • 通常、買主は、物件そのものを見て判断しているため、これらの情報のどれが重要か否かは、判断するのは難しい。
3レインズの物件所在地情報のうち所在地名3(番地・号)や部屋番号はなかなか入力されません(2016年1月、東日本で必須入力となるも非表示選択可能)。所在地名3や部屋名を入力しない理由を教えてください。また、どのような条件があれば入力することが可能になりますか。
  • 居住中の方への配慮。
  • それと元付側が抜き行為を嫌がるため。業界内でのルールの徹底と違反者に対する罰則を設け、その上で、入力必須とする。